STOの実相-「合法化」・「資金調達」・「流通」をめぐる困難(第3部)

2019-04-03

編集:Chainnode,Blockchain Business Community

関連記事:STOの実相-「合法化」・「資金調達」・「流通」をめぐる困難(第1部)
関連記事:STOの実相-「合法化」・「資金調達」・「流通」をめぐる困難(第2部)

今回は、これまで紹介した内容について、異なる意見を述べることを目的とする。これは前述の内容が誤っているという訳ではなく、むしろSTOへの理解が深まると共に、STOを見る視点が変化するに伴っていることに起因する。

第3部 STOの苦境と未来

3.1 STOはICO2.0ではなく、金融商品の一つ

「ICOの衰退に伴い、2018年がSTOの革変の年となった」というような意味を伝える記事は少なくない。しかし、これは本当に事実であろうか。

・STOの定義を再検討

ST(Security Token)を一見すると、Token ——Security Token /Utility Tokenという形で理解してしまうことがある。しかし、実際には、ST(Security Token)は、Security——Security (Digital)/ Security(Token)という意味を表す。

STは有価証券などの従来の金融商品から派生する比較的新しい証券の類型の一つであるが、STOは、ICOに由来するいわゆるICO2.0ではなく、私募と類似する前提のもとで、デジタル化の方法を用いて、証券を発行することや資金調達の行為を指す。ICOのように、人、場所、時間、方法を問わず、購入、分割、流通を恣意的に行うことが不可能とされている。

・STOをIPOと比較することが困難

この理由は、STの発行は現行の私募法律に基づき実施されているものであり、一般市場に向けて公開するものではないことにある。そのため、「公募の証券より、私募の証券のほうが多くの投資家の注目を集め、より良い流動性を備えている」という考え方は現在の段階では検討の余地がある。

一方、STOと「私募」を比較すると、一定の優位性が認められている。例えば、従来の私募と同様に、「持ち株(例)」に応じて配当できるほか、取引所や特定の方法を用いて、あらかじめ戻り売りをすることも可能である。STの発行側は目的を資金調達とするならば、直ちに上場する(公開する)必要はなく、あくまで上場は選択の一つである。

 

3.2 STOの合法性の命題は偽か

これまでSTOをめぐる合法性については常に注目を集めているが、これに対して、「この命題は真なのか」という疑問も現れている。

・STOを行うための登録制度は不明確

第2部で述べたように、STOを扱っている特定の法律が世界各国においても制定されていないのは現状である。私募の法律に基づく場合が多い。しかし、私募により発行された「証券」は、どのようにコインに転換されるのか。ここではSAFTの概念が利用されている。つまり、ICOのようなあらゆる投資家向けではなく特定の投資家に限定したことで、法律上の証券の規制対象となり合法化のプロセスとなる。

VIE(変動持分事業体)を通じての合法化への考え方もあるが、委託の引受け(発売・発行)が問題となる。例えば、中国の厳しい法律環境を避け、VIEを通じてアメリカで合法化を目指すことは可能だが、仮に資金調達のステップに至ったらどうなるだろうか。運営の主体が中国に置かれているため、可能なら多くの中国投資家からの支持に期待したいところであるが、自分のプロジェクトをどのように宣伝すればよいのかに困るかもしれない。

既存の証券市場には、「引受け」という役割が存在している。この「引受け」になるためにはライセンスが求めれる。また、投資家の地域によって、異なる国のライセンスが必要である。しかし、このような「引受け」を担当できるのは銀行や証券関連の機関に限定されている。そのため、現在、STOの「委託の引受け」を認める条件はほとんどないと言えるだろう。

「合法の取引所」と「非合法のトークンプロトコル」

SAFEの実行の段階となると、具体的にはどのように行われるのか。簡単に言えば、適格投資家のウォレットアドレスを収集し、ホワイトリストを作成する。そして、イーサリアムでSECURITIZEが提供するプロトコルを通じて、ERC20の基準でコインを発行する仕組みである。

しかし、取引の合法性が配慮されたためこれをSTO取引所で行わなければならなくなった。このプロセスにおいて、取引所、ウォレット、プロトコルという3つの要素があるにもかかわらず、これらに対する監査基準が設けられていない。取引所はATS/BDライセンスを取得することが可能であるが、どちらのプロトコル(非合法のプロトコル多数存在)を採用すればよいのかが問題として指摘されている。現在、OpenFinanceとtZEROを除けばSTを扱う取引所は存在しない。

だが、IDhubの設立者である曲明氏はインタビューで、プロトコルには業界の基準がないことに対し、「正常で有り触れたことだ」と表明し、「0から1になるため、多くの関心者の力と時間が必要だ」とコメントしている。

・集客の重要性

認知度の高いナスダック、ニューヨーク証券取引所のほか、比較的規模の小さい取引所が多数存在している。しかし、これらの取引所が集客の問題に直面し運営の危機に悩まされている。

BlockAtelierの関係者はインタビューで、「tZERO、Openfinance、Templum、Sharespost、Bnktothefutureなどのように、ライセンスは付加的な項目の一つに過ぎない。ライセンスを取得することは合法の第一歩として重要な意味を持つものの、市場開拓とサービスの多様化に力を注ぐことがより多くの将来性に繋がっている」と述べ、「潜在する投資家、市場目標、位置づけなども異なっているので、何を以ってどのように合法性があると言えるのか、といった問題を抱えている」と指摘した。

こうした理由で、STOの合法性だけに多くの問題点が見えるようになった。今後の資金調達、流通などを一体どのように推進するのだろうかという疑問を抱える人もいるかもしれない。しかしながら、まず問題点を発見することが大事だからこそ、プロジェクト、資本側、サービス提供者を始めるとする多くの関心者がSTOに参入しつつあり、STOのエコシステムを共に構築していく兆しも見え始めた。

 

3.3 資金調達は困難か

STOによる資金調達の優位性はどこにあり、またSTの流動性は不足していないか、という点について投資家はどう考えているのだろうか。8 Decimal Capitalの関係者は、投資家のSTOに対する態度が主に以下の要因によって影響されていると説明している。

・プロジェクトを提供する側:プロジェクトの質

STOmarketを見てみると、日本においては良質なプロジェクトが多数存在しているが、中国をはじめとする海外市場においては、単に資金調達を目的とするプロジェクトが氾濫している。そのため、投資家のSTOに対する態度はプロジェクトを提供する側の質(投資価値があるかどうか)に左右される。

・資金を提供する側:流動性

STOはグローバル資本市場に向けているので、アメリカ、アジア、ヨーロッパ、ジブラルタルなどの地域が幅広く含まれている。また、証券二級市場だけではなく、FA、Broker Dealer、既存の仮想通貨取引所と証券取引所などとの提携なども流動性の拡大方法と考えられている。

 

3.4 流通性を高める一連の方法は欠如

STOは合法化への道を歩くと共に、流通性が失われていると懸念する声もある。STOを扱っている取引所はライセンスを求められているため、現実の状況は、既に「高度な流通性を有する」という最初の構想から外れている。

このような「ズレ」に対し、IDhubの曲明氏は、「100%の合法性を追及したあげくに、従来の取引所の運営モデルに戻る恐れがある。そのため、合法性を可能な限り求めると同時に、新たな突破口を見つけることも重要」と表明している。曲明氏の見通しは、STを既存の仮想通貨のように、ウォレットを用いることで多様な市場に提供し取引を行うことにある。しかし、合法性などの制限によって、証券型トークンを扱う業界基準の制定は非常に複雑であると考えられている。

 

まとめ

以上、STOを「合法性」、「資金調達」および「流通」という3つの視点から分析し、様々な課題が見えるようになった。第1部では、STOの基本について検討し、その仕組みについて概述した。第2部では、STOのエコシステムを構築する諸領域の例を取り上げ、それぞれの領域を有する機能や役割、現状およびその背後にあるリスクを合わせて、STOの実態を描いた。第3部では、既存の考えをそのまま受け入れるのではなく、これまでの定義を再検討することで、STOと関わる「合法性」、「資金調達」、「流通」に問いをかけ、STOのもう一つの側面を提示した。要するに、現在の段階では、STOにおける多様な目的を達成するための手段が欠如しているため、投資家はプロジェクトを判断することが難しくなり、判断の基準に悩まされていることに繋がっていると結論している。その結果、比較的大きなプラットフォームへ単線的に注目しすぎることが、STOのエコシステムを支える基盤を弱めることを招く可能性があると考えられている。今後、「STOの事例」と「各国法規制」に対する研究を深め、STOに相応しい未来を迎えることを期待している。

 


・無断転載は禁止です。事前にBBC編集部までご連絡ください。

この記事をシェアする:
Related Article

あわせて読みたい関連記事

COLUMNS

コラム

すべてのコラムを見る