5事例と各国の規制面から見る出来事でブロックチェーン業界の2019年を振り返る

2019-12-28

ブロックチェーン業界の2019年
仮想通貨市場は、2019年3月より弱気市場から抜け出し、再び急上昇を見せていました。一方で、6月以降、相場が下落トレンドに転じたにもかかわらず、ブロックチェーン業界では多くのプロジェクトが事業を着実に展開しました。本文は、ビットコイン価格、リブラ、ライトコイン、バックト、分散型金融という5つの出来事を代表例として取り上げ、2019年の動向を振り返ります。最後は、規制面から見る国内外の重要な出来事の一部を紹介していきたいと思います。

 

一、5事例を振り返る

 

1.ビットコイン価格の変動
ブロックチェーン業界を見る時に常に利用される指標の一つ、ビットコイン価格は、2017年初旬から上昇が始まり、同年12月17日にピークに達し、19,500ドルに近づきましたが、その後の価格が急落に転じ、翌年の2018年になると、1年間は弱気市場でした。

ビットコインのトレンド

2019年の3月から価格が再び急上昇を見せ、6月下旬13,000ドルを突破しました。ただし、7月10日以後、ビットコイン価格が継続的に下落し、11月と12月には一時的に7,000ドルを下回ったことも一時的にありました。もし2017年から2018年にかけて2年間のビットコイン価格の推移を一つの周期と見て、2019年~2020年を次の周期とみて考えてみると、ビットコイン価格は依然として、下落トレンドに位置する可能性が高いと考えられます。

 

2.リブラの登場
6月18日、注目を集めているリブラ(Libra)が正式に登場しました。同名の仮想通貨「Libra」と専用仮想通貨ウォレットによって構成するこのプロジェクトは、国境を越える決済問題を解決することを目的としています。その後、仮想通貨プロジェクトのLibraを管理する「Libra協会」は10月15日、21社のメンバーが「リブラ憲章」に署名し、正式に始動しました。

FaceBook

しかしながら、マネーロンダリングやデロ資金調達等様々な側面をめぐって、各国政府はLibraに大きな懸念を示しています。このような厳しい規制環境のもとで、Libra協会の内部にも不安な動きが始まり、Libra協会への加盟を見送ると発表した会社は少なくありません。

また、FacebookのCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、10月23日、米国下院金融サービス委員会の公聴会の中で、6時間以上に渡って米国議員らによる「Libra(リブラ)」に対する懸念に応え、様々な質問に追われています。12月、Facebookの内部で既にテストネットでLibraの使用を開始したとのことです。しかしLibraの発行が予定通りで実現できるかどうかについては、大きな懸念が残っています。

 

3.ライトコインの半減期
8月5日、ライトコインは半減期を迎えたことで、マイニング報酬は25LTCから12.5LTCに減少したことがわかりました。次の半減期は2023年8月頃となっています。ライトコイン価格は2019年6月22日、高値の145.8ドルに到達し、その後下落相場に変わりました。半減期を迎える前の一週間に、ライトコイン価格が一時的に上昇しましたが、現時点(12月26日)では、40ドルまで大幅に下落したことが確認されました。

ライトコインの半減期

一部の分析者は半減期到来により、多くの小口投資家はライトコイン価格が上昇していくと誤って想定していた結果、大きな損失を被ったと分析しています。その要因は、大口投資家が、高値でライトコインを大量に売却したことで、下落相場をもたらしたことにあります。この観点から、来年度の半減期を迎えるビットコインの価格変動にも注意する必要があるでしょう。

 

4.暗号資産取引プラットフォームのバックト
バックト(Bakkt)は、ニューヨーク証券取引所の親会社であるインターコンチネンタル取引所(Intercontinental Exchange=ICE)がビットコイン先物取引を提供するために発足したプラットフォームです。

Bakkt

2019年9月23日現物渡ビットコイン先物取引を開始し、10,115ドルの価格で行われた最初の取引をBakktがツイッターにて公開しました。一方で、Bakktが現金決済型ではなく、現物渡型を選んだこの契約について市場価格や流動性により大きな影響を与えるとの指摘があります。

同年12月9日、BTC現金決済先物(Bakkt™ Bitcoin (USD) Cash Settled Monthly Futures)とBTCオプション(Options on Bakkt ™ Bitcoin (USD) Monthly Futures)の取引がシンガポール、ロンドン、ニューヨークで開始されました。

 

5.分散型金融の拡大
分散型金融(DeFi)にとって、2019年は重要な一年でした。イーサリアムをはじめとする、スマートコントラクトを実行できるブロックチェーン上に開発されたプロジェクトの数は、継続的に増加しています。そのうち、分散型金融に預託された総額は、10億ドルを突破したことが報じられました。

DeFi

分散型金融を扱うプロジェクトが進められる中、利用者は中央集権型の金融システムを介さず、多くの金融サービスを受けられるようになりました。一方、そのサービスを利用するには、一定の知識が必要とされています。分散型金融の普及に向けて、2020年には、関連知識を持たない初心者でも、簡単に利用できるようなサービスを提供していく必要があると考えられます。

 

二、規制面から見る国内外の重要な出来事

 

1.日本 暗号資産の法的枠組みの強化、着々と進む
2019年5月、仮想通貨交換業者や取引に関する規制強化策を盛り込んだ改正資金決済法と改正金融商品取引法が参院本会議で可決・成立し、2020年4月から施行される見通しです。これにより、仮想通貨の呼称が「暗号資産」に正式に変更され、仮想通貨を金商法上の規制対象として扱われるようになります。2019年12月25日の時点で、金融庁の仮想通貨交換業者として登録された数は、22社となっています。

日本事情

2.米国 デジタル資産分類を実施、仮想通貨に関わる納税義務も強調
米証券取引委員会(SEC)は、2019年4月3日、デジタル資産が有価証券、投資契約に該当するかを判断する時に用いる基準「Framework for “Investment Contract” Analysis of Digital Assets」を公表しました。一方、米国内国歳入庁(IRS)は7月26日、仮想通貨による収益の納税を行っていないと見られる投資家に対して、警告する書簡の送付を開始し、10月9日に新たなガイドラインを公開し、仮想通貨の定義を明確した上で、納税の義務を再び強調しました。

Tax

3.シンガポール 外国投資を引き寄せる国内の法規制整備
シンガポール金融管理局が2019年8月7日、「Sandbox Express Guidelines」の運用を開始したことは、金融機関とFinTech企業にとって積極的なサインを意味します。また2020年1月28日より「決済サービス法案」の正式施行は、シンガポール市場における多くの仮想通貨取引所、ウォレット、およびOTCプラットフォームに直接影響を与え、リスク管理とコンプライアンスの両面から関連事業を包括的に規制します。

 

4.中国 ブロックチェーン技術を国家戦略として扱う 詐欺事件が多発
習近平中国国家主席は2019年10月24日、中国共産党中央政治局が開いたブロックチェーン関連の研究会に出席し、ブロックチェーン産業への研究と投資を拡大する方針を伝えました。中国当局は、広東省深セン市、海南省海口市をはじめとする沿岸部において、ブロックチェーン技術の研究開発、運用普及を続々と推進しました。一方で、ブロックチェーン技術を悪用し、違法な資金調達や無許可で仮想通貨売買を行った業者に対しては、取り締まりを一層強化しています。

 

三、まとめ

 

2019年は、2017年、2018年と比べて、ブロックチェーン業界は着実にしたと感じています。その理由は、2017年~2018年に個人と企業がブロックチェーン技術を活用した、デジタル経済領域(仮想通貨)へ注目したことに対して、今年は各国政府がブロックチェーン技術と他の新興技術を合わせることで、経済や技術の突破口を模索する傾向(例えば、中央銀行によるデジタル通貨の検討、官公庁の技術導入)を拡大させていることにあります。

言い換えれば、各国は一律否定的な姿勢を見せるのではなく、技術革新がもたらす可能性を本格的に見直し始めました。ただし、各国は仮想通貨に関わる個人と企業の動向に対し、依然として高度な警戒感を示しており、仮想通貨を扱う法規制が慎重に検討されているのも現実です。

一方、ビットコインやイーサリアムをはじめとするブロックチェーン技術を利用した仮想通貨は、独自の経済システムを構築し、取引所やウォレット、マイニング産業に影響を与えています。特にスマートコントラクトを実行できるイーサリアムにおいては、分散型金融(DeFi)、自律分散型組織(DAO)等も大きな成果を遂げ、PoSに移転するイーサリアム2.0も順調に推進されているように見えます。

しかし、2019年下半期には、仮想通貨相場全体が下落する中、一部のプロジェクト(例えば、マイニング産業など)は大きな損失を被り、投資家は投資性向を失なったため、資金を更に回収しようとする傾向もあり、仮想通貨の流動性も前年度と比べて減少していると指摘されています。

ビットコインの半減期を前にして、2020年上半期はビットコイン価格が大きな注目を浴びるでしょう。その価格と価格の変動による業界へ影響を予測することは難しいですが、仮想通貨だけでなく、ブロックチェーン技術の普及と応用が一層拡大していく時代が2020年に来ることを期待しています。

 


 

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