「Guidelines on Digital Assets」、マレーシアのIEO規制

2020-01-24

SC
IEO(Initial Exchange Offerings)と言えば、仮想通貨取引所を経由するトークンの発行を実現する手法です。ICOと呼ばれる方法と同様に、多くの国家や地域がIEOを資金調達行為として、法律違反にあたる懸念を抱えています。例えば中国や米国などは、既にIEO関連活動に対し高度な警戒感を示しました。

一方で、韓国とマレーシアは、IEO関連について柔軟性のある姿勢を見せています。2018年、高麗大学仮想通貨研究センターや、韓国ブロックチェーン起業協会がIEO向けのガイドラインを共同発表しましたが、このガイドラインは強制的な方針ではないと強調されました。また2020年1月15日、マレーシア証券委員会(SC)が「Guidelines on Digital Assets」を公開しIEOについての規範を定めました。

本文、マレーシア証券委員会(SC)が公開した内容を簡単に触れていきましょう。

 

一、デジタル資産や仮想通貨に対する政府措置

 

投資対象としてあまりに人気度の低いマレーシアと言われているものの、ブロックチェーン技術と仮想通貨の影響を幅広く受けています。SCは新興技術を導入するとともに、リスクへの防止対策を実施しています。

・2017年9月、SCはICOへの注意喚起を行いました。
・2018年、SCはCopyCashやLavidacoinを含むICOプロジェクトを中止させ、ICOへの規制政策を検討し始めました。
・2019年1月、「Capital Markets and Services(Prescription of Securities)(Digital Currency and Digital Token)Order 2019」が施行されたことで、暗号資産を証券として規制範囲に加えました。
・2019年1月、SCは「Guidelines on Recognized Markets」という修正法案を公開し、暗号資産交換業者は登録義務を要するとの内容を追加しました。
・2019年3月、SCは世論からICOに関わる監督や、リスク、現状の意見公募を実施しました。
・2019年6月、一部の取引所に条件付きでライセンスを交付しました。
・2020年1月、SCはガイドラインを公開しIEOについての規範を規定しました。

 

二、「Guidelines on Digital Assets」の概要

 

ガイドラインでは、IEO規制は主に発行側(プロジェクト)と運営側(取引所)を対象に監督の実施をします。

(一) 発行側

1.発行人(自然人)
法人資格(上場企業を除く)、登録地(マレーシア)、資本金(RM500,000)、役員(資格審査)など。

2.役員の所持株
投資者保護の観点から、発行当日と発行後には、役員の所持株式の割合と株譲渡について規定しました。発行日(役員の所持割合は50%以上)、発行後(譲渡割合はそれぞれ所持株数の50%以下)等

3.プロジェクト
マレーシアの国家利益に相応しい提案のあるプロジェクトに限ります。

4.取引所
一種類のトークンは、一つの取引所のみでしか発行できません。複数の取引所で同時に発行することが禁止されます。

5.資金調達
一年間の調達金額は資本金の20倍以内、且つ調達総額はRM1億(約2,500万ドル)以下です。発行側は資金用途を変えようとする場合では、トークン保有者の75%以上の賛成を得なければなりません。

6.投資家
(1)投资制限
専門投資家(制限なし)、エンジェル投資家(RM500,000)、個人投資家(RM2,000)

(2)投資撤回
投資した時点をもって6か月未満の投資家は資金を撤回する意思があれば、撤回は可能である。IEO運営側は投資家の資金撤回を協力しなければなりません。

7.情報公開
発行側はIEOの実施取引所にて年間報告を発表しなければなりません。

 

(二) 運営側(取引所)

SCは運営側に対し、厳しい審査を実施しています。運営側自身の合法性が求められるほか、発行側への審査を担う補助役も期待されています。違法活動が認定された場合、SCは運営側に交付した資格や行政許可を随時撤回する権利を有します。

1.基本条件
法人資格、登録地(マレーシア)、資本金(RM5,000,000=約125万ドル)、役員(資格審査)

2.ライセンス
SCに申告し、IEO運営者の登録を行い、またIEO運営者は暗号資産取引業務に該当する場合では、「Guidelines on Recognized Markets」に基づきRMO資格を申請しなければなりません。

3.その他
(1)SCによる監督の下で、トークン発行に関わる規定、規範を作成します。


(2)発行側への審査を実施します。

(3)発行側のホワイトペーパーと、年間報告書を審査し信用性と正確性を保証します。
(4)発行側の資金用途を監視するほか、信託口座等についてSCの承認機関に限ります。
(5)IEO運営側が所持する発行側の株の割合は総数の30%以下です。
(6)IEO運営側が投資家向けのあらゆる資金援助を禁止します。
(7)業務依頼、中止、撤回等の変更はガイドラインに従います。
(8)マレーシアのマネーロンダリング対策、テロ対策、個人情報などの法令に従います。

 

三、SCはなぜIEOをガイドラインに加えたのか

 

マレーシアで乗り出された法規制及び近年の立法背景を見ると、ICOの風潮からの影響を受けているものの、SCはICOに対し曖昧な姿勢を取っているように見えます。注意喚起や個別監督など、リスク防止に関する対策を少し実施しましたが、やはり技術と金融イノベーションを促進し中小企業の資金調達を活性化する狙いがあるため、ICOの存在を黙認した側面が見られます。

しかし、今年1月に公開された「Guidelines on Digital Assets」では、その規制対象はICOではなく、態々IEOが取り上げられました。発行側(プロジェクト)と運営側(取引所)の両方に対する監督で投資家の利益もある程度で保障されるでしょう。これにより、マレーシアではIEOの法的位置づけが認められる一方で、ICOをはじめほかの資金調達手法の正当性が失われたのではないかとの側面も考えられます。

 

四、ガイドラインから見られるIEO規制の特徴

 

1.積極的かつ慎重に監督を推進
マレーシア規制当局は、IEOの金融効果を認め、その法的位置を与えたと同時にIEOの発行側と運営側の両方に厳しい義務や責任をかけています。

2.原則と細則の統合
マレーシア政府は、アメリカのような新たな法案を作るのではなく、トークン発行に関わる事項を現行の証券法が扱う規制範囲に入れる方法や、マルタのような自国の実情に応じてトークン発行のみを扱った法規制に乗り出す手段を採用したのではありません。

むしろ仮想通貨やトークンを証券としての属性を認め、具体的な規制内容を含む法的根拠となるガイドラインを提供し、原則と細則を統合する監督方法を用いりました。

3.第三者による監督を導入
SCは監督者としての役割を果たしていくほか、IEO運営側が監督役を担うことを承認しています。IEOの運営側は完全に独立した第三者ではないが(実は利害関係者)、「IEOの参与者としてSCよりIEOの事情に詳しい」「質のよいIEOのプロジェクトを選別する能力を有する」「IEOの発行側との連帯責任を負う」「SCの規制コストを削減」といった理由を取り上げることができます。

 

 


参考文献
1.https://www.sc.com.my/api/documentms/download.ashx?id=dabaa83c-c2e8-40c3-9d8f-1ce3cabe598a
2.https://www.sc.com.my/api/documentms/download.ashx?id=8c8bc467-c750-466e-9a86-98c12fec4a77
3.https://www.sc.com.my/api/documentms/download.ashx?id=eb8f1b04-d744-4f9a-a6b6-ff8f6fee8701

 

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